大判例

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大阪地方裁判所 昭和39年(ワ)6451号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、原告が昭和三一年一〇月一日本件土地を訴外竹田哉雄に建物所有の目的で賃貸したこと及び前記大一電気が昭和三九年二月ころ原告に対し本件土地上に建物新築を申し出たので原告が同年三月一四日これを承諾したことは当事者間に争いがない。

<証拠>を綜合すると、本件土地上には以前から木造建物が存在し、本件土地の賃借人であつた前記竹田哉雄が設立した前記大一電気が右建物を使用していたが、昭和三九年初ころになり右建物を大一電気において建替える計画が具体化し、当初は従前の木造建物の一部建替を予定していたが、その後被告から建築資金の融資を受けるかわりに完成した建物の一部の使用を認めることとし、従前の建物の全部を軽量鉄骨造二階建の本件建物に建替えることとなり、当時大一電気の実質的代表権限を委ねられていた訴外竹田昭夫が昭和三九年三月一四日ころ、右計画を原告に告げてその承諾を求めたところ、両者間で賃料を従前の約八倍にあたる三一、九〇〇円とすること、承諾料として一〇〇万円を支払う(但し分割払)こと、新築建物の一部を第三者に使用させることを認めること等の条件のもとで話合がつき、大一電気は原告の承認印のある建築確認申請書を作成したうえ同年三月中に工事に着手したこと、且つ原告はそのころから本件土地の賃料を大一電気の名義で領収するようになつた事実を認定することができ、<反訴排斥>。

右事実関係に照らせば、本件土地賃借権は、大一電気による右建物建替によつて、前記竹田哉雄から大一電気に譲渡され、原告はこれに承諾を与えたものとみることができる。

二、<証拠>によれば、前記大一電気は、前記建物建築途中の昭和三九年四、五月ころ不渡手形を出して倒産したが、被告は当時大一電気に対し約一、二〇〇万円の債権を有していたのでその善後策として、大一電気の他の債権者に対する債務を引受けるかわりに本件建物(被告の援助によつて建築を完成させた)を含む大一電気の資産を取得することとし、そこで本件建物の取得にともなう本件土地賃借権譲渡につきその承諾を得べく原告と交渉を続けたが、同年六月下旬乃至七月上旬ころ、被告会社大阪支店において、原告と、被告会社の専務産形、大阪支店長大川一男、同営業課長中田昭三、同社員小川勉及び大一電気社員瀬川巍らが話合つた結果、原告は、本件土地を被告に貸すこと自体には異存はない旨を述べ、ただ名義書換料として一〇〇万円を要求したが被告側は二〇万円程度を希望して一致しなかつたので、この点はなお後日原告と右大川との間で協議することとしたこと、そして原告は同年七月分以降九月分までの賃料は、被告振出の小切手で受領したこと、右名義書換料については、その後五〇万円に多少の色を付ける旨の原告の要望も出されたが、結局同年八月中旬ころ五〇万円とすることに両者間で了解ができた(五〇万円でよいと言つた旨は原告本人もその第一回尋問において供述している)こと、ところが、同年一〇月ころ原告は前記竹田哉雄が異議を述べているからとの理由で被告への賃貸は留保する旨主張し出したこと、以上の事実を認定することができ、<反証排斥>。

そして、元来、法が賃借権譲渡または転貸について賃貸人の承諾を要件とした趣旨は、賃貸借関係においては、賃借人が何人であるかによつて、賃借物件の使用収益の態様及び賃料支払義務等の履行の期待等に差異があるので、賃貸人のこの点についての利益を保護しようとしたものである。してみれば、賃貸人が賃借権の譲受人または転借人が何人であるかを知つてその譲渡または転貸自体を承認した以上、右に述べた法の趣旨は充足されるものであるから、たとえ名義書換料等について後日に問題を残したとしても、承諾自体は既にそれがなされた時点において効力を生ずるものと解すべきである。これを本件についてみるに、前記認定のとおり昭和三九年六月下旬乃至七月上旬ころ被告会社大阪支店において原告、被告会社大川支店長、大一電気社員瀬戸川らが会した際、名義書換料をいくらにするかについて協議はととのわなかつたが、原告は本件土地賃借人を被告とすること自体については異存がない旨を表明したのであるから、これによつて大一電気から被告に対する本件土地賃借権譲渡の承諾があつたものということができる。たとえそうでないとしても、結局において、右名義書換料が同年八月中旬ころ金五〇万円とすることに了承されたことは前記認定のとおりであるから、その時点で承諾の効力が生じたものと解することができる。

ところで、原告は、承諾を与えうるのは賃借権の譲渡をなそうとする者に対してであつて譲渡を受けようとする被告に対し承諾をすることはできない旨主張するが、前記認定のとおり、原告が賃借権の譲渡自体を承諾した席上には大一電気の社員である瀬戸川も居たのであるし、元来は承諾は賃借人に対してなされるのが原則ではあるが、譲受人に対してなした承諾も効力を有するものと解すべきであるから、いずれにするも原告の右主張は理由がない。

以上の経緯のうえ、<証拠>によれば被告は売買の形式によつて昭和三九年七月一〇日ころ大一電気より本件建物の所有権を取得すると共に本件土地賃借権の譲渡を受けたものであることが認定できる。そして、前記の承諾はその後になされたものとも認定しうるが、譲渡後の承諾もその効力を有するものと解しうることも当然である。(立川共生)

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